松本清張傑作短篇コレクション〈上〉

松本清張傑作短篇コレクション〈上〉松本清張傑作短篇コレクション〈上〉
松本 清張 宮部 みゆき

文藝春秋 2004-11
売り上げランキング : 6,616
おすすめ平均

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宮部みゆき責任編集の清張短編傑作選、その上巻。「削除の復元」はちょっと読んだところで肌に合わずにやめ、ノンフィクションの第四章も読む気が起きなかった。なので8割読了といったところ。
読んだうちでは絵画贋作をモチーフにした「真贋の森」、円谷が映像化もした「地方紙を買う女」が良かった。前者はボリューもあって特に読ませるものだったけど、最後の投げだし方がどうも…。盛り上げるだけ盛り上げといて、このラストでいいんですか? (06/1/* 一部を残し読了)

評価 ☆☆☆

「五人女捕物くらべ〈上〉」平岩弓枝

五人女捕物くらべ〈上〉五人女捕物くらべ〈上〉
平岩 弓枝

講談社 1997-06
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岡っ引きの小平次の家に居候する青年武士・忠吉郎の助けを借り、5人の女岡っ引き(と、あらすじには書いてあるが、全員が十手持ちではないようで…?)が難事件に挑む捕物帳連作。
連作としてのポイントは、素性明らかでない忠吉郎の出自はいったい…といったところなのだが、これは下巻で語られることになるのだろう。5人の女岡っ引きは、よく描けている者もあればそうでない者もあり。事件の謎解きにウェイトがかかりすぎているせいだけど、そのへんも踏まえて下巻は5人競演の長編になるのかと思いきや、どうやら上巻同様、1人1話の短編集のようで。続けて読んだものか考慮中。 (06/1/26読了)

評価 ☆☆☆

「功名が辻(全4)」司馬遼太郎

功名が辻〈1〉功名が辻〈1〉
司馬 遼太郎

文藝春秋 2005-02
売り上げランキング : 1,610
おすすめ平均

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本年最初の読了本。年をまたぎ、年初は1巻の後半から読み始めて2日に全4巻を読了した。
今年の大河ドラマだそうだ。御多分に漏れず、ぼくも「山内一豊の妻」というフレーズと、その夫・一豊のためにヘソクリで馬を買ってやったエピソードくらいしか知らない。あと、幕末維新史が好きなので、一豊が土佐の鯨飲侯のご先祖だってことくらいか。
なので、読み始めこそ期待に胸膨らませていたのだが、実は物語の大半が、信長、秀吉、家康が活躍したお馴染み戦国時代のエピソードから成っているので、主人公夫婦の魅力がそれに負けてしまい、歴史物語としても伝記としても今イチのものになってしまっている。
おそらく最も創作のウェイトの高い、最も自由度高く動かせる六平太、小りんが、いつしか存在意義を失っているのも構想の失敗を思わせるし、これはいつものことだが作者・司馬遼がちょこちょこ顔を出すのも鬱陶しく、総合的に見てあまり良い点をあげられない。 (05/1/2読了)

評価:☆☆☆

謹賀新年

新年あけましておめでとうございます。
5月には10周年を迎える当ホームページですが、現在、この「賽子日記」しか更新していないような状況ですので、折りを見てスタイルを変えることになると思います。やっぱり10周年のタイミングかなあ…。でも、それまでは現状どおり、ここに本の感想など綴っていく予定です。
ともあれ、今年もよろしくお願いします。

「扉は閉ざされたまま」石持浅海

扉は閉ざされたまま扉は閉ざされたまま
石持 浅海

祥伝社 2005-05
売り上げランキング : 40,189
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終始、閉鎖空間で物語が進行する密室劇。事件は倒叙スタイルで描かれる。「このミス」の2位を始め、各所でかなりの高評価を得ており、今年の国内ミステリを代表する一冊と言えるかもしれない。
05年最後の一冊として読んだ。普通に面白かった。でも、それ以上のものとは思えなかったな。ボリューム的に中編が適当でしょう。キャラを立たせようとしているのか、いろいろと登場人物にやり取りさせているけど、血の通っていないキャラが空々しい会話を交わすだけなので寧ろ余計。もっと巧い作家がこのプロットを料理していたらな。それでもって、もう少し短くまとめていたら、キレのある上質の中編になっただろうに。
それから、いくらフィクションだからといっても展開がご都合主義過ぎる。ウールリッチなみの筆力があればそれでも有りなんだけど遠く及ばないので、予定調和的な、作り物めいた雰囲気ばかりが強調される結果となっている。
他所の感想を読むと古畑みたいな…という表現が散見されるけど、倒叙というスタイルだけでなくそんな作り物っぽさこそがよく似ている。それこそ演劇でやれば役者と脚色次第では面白くなると思う。
動機の問題については、皆さん指摘しているように弱さを感じるが、許容範囲を超えるものではない。というか、それ以前にキャラクター自体からして人形めいて体温を感じないので、特に動機だけが気になることはないといったほうが近いか。 (05/12/31読了)

評価:☆☆☆☆

「容疑者Xの献身」東野圭吾

容疑者Xの献身容疑者Xの献身
東野 圭吾

文藝春秋 2005-08-25
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他を圧倒する絶対的な力を持ったスターが各界で輩出、歴史に残る記録が多数生まれたのが今年の傾向だったように思う。
朝青龍ディープインパクト(最後はコケたけど)、宮里藍小泉純一郎浅田真央もそうかもしれない。
ミステリシーンでも同様に、年間ベストはこの「容疑者Xの献身」がほとんどタイトルを独占するといった状況になっている。
ガリレオシリーズとかいうらしい連作の初長編ということは、「このミス」の受賞コメントを読んで初めて知った。が、まあ、他のは読まないでも大丈夫だという声もあるので、いきなりこれを読んでみることにした。
面白かった。なるほど評判どおりだ。泣けるといえば泣けるし、ミステリとしても創意もかなり優れたものだと思う。「白夜行」のほうが私的にかなり上を行くが、これを東野圭吾の最高傑作とする意見があっても、全然不思議ではない(と談じきれるほど東野作品は読んでないが)。
ただ、この作品が朝青龍なみの圧倒的な力を有しているかというと、それには首を捻らざるを得ない。まず、シリーズ主人公であるところの湯川のキャラクターが立っていないように思う。必要以上にエキセントリックに描く必要はないけど、なんかシリーズを背負って立つには物足りない。もうちょっとそのへんに枚数を費やしてもらえたら良かったんだけど、この本のネタが一発ネタだけに、ボリュームはこれくらいが適当と言われたらその通りかも。
それから、これもキャラクターと関係してくるんだけど、天才同士の対決といった体裁をとりながら、ふたりの天才ぶりが際だってない。もう少し知的闘争部分を描き込んでもらえたらなあ。やはり、真相が単純なだけに、描きようにも描けなかったんだろうけど。
この作品をめぐっては、二階堂黎人が自サイトの日記に、本格ミステリに関する持論まじえて感想をアップしたことから、同掲示板では議論にまで発展している。まあ、それは景気よくやっていただくとして、氏が指摘している真相は興味深いものだった。なるほど、そう読んでもいいし、確かに東野らしくもある。 (05/12/23読了)

「Xの悲劇」エラリイ・クイーン

4488104010Xの悲劇
エラリー・クイーン

東京創元社 1970-10
売り上げランキング : 8,959
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「ニッポン硬貨の謎」を読んだことで、クイーンを再読したくなった。で、手に取ったのがこれ。
ブームのときに横溝やクリスティは何冊か読んだが、本格的にミステリを読むようになったのはクイーンが最初だった。「九尾の猫」から始めて、片っ端から読みまくった。なのに、なぜかレーンものには手を出さなかった。「〜の悲劇」というタイトルが、当時公開された「Wの悲劇」(原作は読んでないがTV版も見た。映画は今イチだった)を想わせて敬遠する原因になっていたのかもしれない。結局、レーンものを読んだのは20代の後半になってからだった。
正直、X→Y→Z→最後――と、まさに順番どおりにつまらなくなっていくように感じられた。「Y」を推す意見が多いのは知っているが、ぼくは断然「X」を推し続けてきた。「Y」はちょっと怠い。そんな、レーンものではいちばん好きな「X」をこのたび再読した(3回目かな?)。
今回、結構あっさりした話だなと思った。読み手としてのこちらの感じ方が歳を重ねるごとに変わってきていることもあるだろうが、それでも「こんなんだったっけ」感が強い。いや、もちろん面白かったですけど。
続けて「Y」の再読に進むかどうか考え中。 (05/12/11読了)